無名からエースへ!中日 若松駿太 魔球チェンジアップで祐誠高校の星になれ

福岡県出身、祐誠高校では2年秋からエースで3年夏の福岡県大会は2回戦敗退。甲子園出場経験はありません。
2012年のドラフト会議。藤浪晋太郎(現阪神)や大谷翔平(現日ハム)といった同世代の選手が注目を集めた中、中日ドラゴンズから7位の指名を受けて入団しました。
2年目に1軍デビューし、3年目には先発ローテーションを1年守り10勝4敗と二桁勝利を達成、防御率も2.12と抜群の安定感を見せ、年棒も550万から3600万と全球団合わせてもトップクラスのUP率で話題を呼びました。
ドラフト下位ながらエースとしての呼び声も高く中日の投手王国再建に向けて活躍が期待されています。少し、余談ですが高校は土木科で3tまでの重機を扱えるそうです。
❑無名の存在からのスタート
ドラフト7位の指名で中日以外の球団からの調査書はなしとまさにドラフト指名されまでその名を知る人はほとんどいなかったのではないでしょうか。
本格的に投手に転向したのは高校2年の秋からでストレートも最速143km、高校時代の成績もこれといった結果は出していないことから本来であれば指名を見送る場面ですが、中日は若松が大学・社会人に進んだ場合は他球団との競合になると判断して獲得に踏み切ったとのことです。
若松の才能を見抜いたのが当時中日の九州担当スカウトをしていて渡辺麿史スカウトです。渡辺スカウトが若松を初めて見たのはショートを守っている姿。その姿を見て監督に投手転向を勧めたのが始まりだそうです。直すところのないフォームから将来性を感じとったのでしょう。
印象深いのが昨年初勝利をあげた西武戦でのインタビューで渡辺スカウトへの感謝への想いを語った場面です。プロ野球の世界に導いてくれた渡辺スカウトを恩師と仰いでいる。
渡辺スカウトは2014年にお亡くなり、本人は背番号61について恩師が与えてくれた背番号を一生貫くと話している。
❑ブレイクするまでの軌跡とは?
投手歴が浅いにも関わらず、高卒3年目で二桁勝てるのはまずその土台にあると思います。本人が田んぼで囲まれたと話すように、高校まで約10kmを自転車で通い、最寄りのコンビニまで約2kmをランニングしていた毎日の積み重ねで得た強靭な下半身があります。
その証拠として新人の合同練習での長距離走では断トツの1番でした。
恵まれた身体能力と吸収力があること、何より改善されたことのないフォームは野球センスを感じさせられます。
そして、3年目のブレイクの一番の要因と言われているのがチェンジアップの取得です。
それまではスライダー、カーブ、フォークが持ち球でしたがそれに加えたこのチェンジアップが若松の代名詞になるほど効果的な球種になりました。
通常のチェンジアップは抜いたり捻って投げるので球が落ちたりシュート回転するのですが、若松のチェンジアップはストレートと同じ軌道・回転らしいのです。
これにより打者はよりストレートと錯覚しタイミングが合わない、さらにボールからストライクに行くような動きがなくストライクゾーンで勝負できるので打者としては追い込まれたら振るしかなくなります。
昨年奪った三振の113個のうち59個がチェンジアップです。ちなみにチェンジアップで奪った三振数は断トツの1位で2位は21個です。
そのチェンジアップに加えてもともと定評のある低めへのコントロールや速球のキレの向上があっての昨年の成績なのです。
ちなみに今年二桁勝利した若松以外の日本人は、
セリーグ…前田健、藤浪、石川、大野、小川、能見、菅野
パリーグ…大谷、涌井、武田、石川、十亀、吉川、摂津、東明
摂津がドラフト5位でそれ以外は1位か2位しかいないです。それくらい下位指名からの先発投手としての活躍はそうあるものではなく、若松のポテンシャルの高さがドラ1級であることを物語っています。
❑更なる飛躍のカギは?
2年連続の二桁勝利に向けて取り組んだのがシンカーの取得でしたが、結果が出ず断念しました。そのかわりシンカー系でカウントを取るチェンジアップのスピードを約5km速くするという改良に取り組みました。空振りでなく打ち損じをさせることで球数を減らすことが目的です。
確かに昨年は球数が多くなり途中降板を余儀なくされる場面もありました。このチェンジアップの精度が増せば完投数が増えてくると思います。
本人のシンカーのコメントで、
「ダメならすぐに止めます。シンカーにこだわっていても進めない。新球だけが進化じゃありません。配球を含め、昨シーズン学んだ事も多いです。ボールの出し入れや、対打者への考え方、やることは山積みです」。
と21歳とまだ若いですがシンカーにこだわらず他の不足を補うという大人な考えもあり更なる期待を予感させます。
❑目指せ次代のエース!
よく2年目のジンクスといわれます。中日でも福谷や又吉はブレイクの翌年かなり苦労していました。今年は相手チームからよりマークされる立場で迎えるシーズンで真価が問われます。
まだ、21歳と若いので怪我や自分を見失わず活躍に期待し、将来的にはドラゴンズの現在のエースである吉見のような投手になれるよう2016年シーズンの更なる飛躍に注目しましょう。