広島ドラフト1位は153km剛腕!加藤拓也の最大の武器は心力『エースの矜持』(慶応大出:背番号13)

広島カープ25年ぶりの優勝の勢いのまま真向から挑んだドラフトだった。
結果は、
1回目の抽選で田中正義(創価大)を外し、2回目の抽選でも佐々木千隼(桜美林大)を外し広島はペナントレースと同じ「神ってる」ドラフトとはならなかった。
3回目の1位指名としてセリーグ王者が選んだのが神宮の星、慶応大学エース 加藤拓也だった。
「外れ外れ1位」、以前であれば同じ1位でも評価が低く見られるが今年のドラフトは2回目の抽選が外れ1位の抽選としては史上最多5球団となる異常事態だった。
この異常事態の背景は2016年ドラフトが近年稀にみる大豊作と呼ばれたためだった。例え抽選に外れてもまだ魅力的な1位クラスの選手が残っていることを意味し、1位指名を受けたことで加藤投手はハイレベルな今年のドラフトであっても魅力ある選手の一人であったことを証明することになった。
➊基本データ・球歴・アマ実績
ポジション:投手(右投右打/175cm90kg)
出身校:慶応高校(甲子園出場なし)→慶応大学
生年月日:1994.12.31
出身地:東京都
名門慶応高校時代は甲子園出場はなく3年夏は県ベスト8、慶応大学へ進学後は1年春からリーグ戦へ出場を果たす。主な個人タイトルとしては2年春に4勝を挙げ、最優秀防御率(0.87)を初受賞しチームを優勝へ導く。3年秋にも防御率1.19で同賞を受賞した。
また東京六大学選抜にも選ばれ、ハーレムベースボールウィークに出場。先発・救援の二役で計5試合に出場し、防御率は脅威の0.00とパーフェクトな成績を残して最優秀防御率賞を受賞し、チームの準優勝に大きく貢献した。
➋ドラフト前の評価は?
やはりMAX153kmのストレートが新聞・専門誌でわかりやすい魅力として伝えられていました。
体系ががっしりしていることからパワーピッチャーとしての評価が先行していましたが大学3年の頃より徐々に力を抜くことも覚えたことで投球に安定感が増し、ドラフト候補から上位指名候補へとステップアップしていきました。
しかし、加藤投手の魅力はストレートの速さやピッチングスタイルだけではなく野球の名門を歩んできた経験やクレバーな考え方を身に付けていることです。
以前、明大のエース柳 裕也(中日ドラフト1位)との投げ合いに勝ったときのコメントでも表情を変えず「相手は柳ではなく明治の打線なので」、メディアは派手に「投げ勝ってうれしい」や「やってやりました」などのコメントを期待したはずです。
この真意として、「自分は勝つことが仕事、マウンドでは勝つことに集中している。相手の投手がエースかどうかで自分のやるべきことは変わりません」と自身のエースとしての役割を語っています。
大学時代ですでにプロとなんら変わらなない思考をすでに身に付けている。これが柳投手の最大の武器であり、これからのプロ生活でもきっと活きてくることでしょう。
➌ドラフト指名時の様子や声
まずは指名時の加藤投手、
「ここ(1位)で指名されると思わなかった。率直に嬉しい」
「上を目指さないといけいない。黒田さんはトップクラスの選手。目指すべきところ」
黒田イメージの質問について、
「気迫であったり、闘争心であったり、男気であったり。チームを愛し、チームのために投げることが投手の仕事だと強く感じさせてもらった」
1年目の目標について、
「シーズン通して投げること」と設定した。
自身の役割については、
「チームの求められるのが自分の仕事場」
指名後に緒方監督から挨拶を受け、決意に満ちた表情で加藤投手らしく受け答えしたようです。
一方で指名した緒方監督は、
「マウンド度胸が素晴らしいと聞いている。打者に向かっていく姿勢を感じるし、ストレートにも力強さがある」
また松田オーナーからは、
「後ろをやってくれれば助かる」と中継ぎ、抑えに期待していることを伝えた。
➍プロ入り後の課題、ライバルは?
今年セリーグを制した広島ですから投手陣は他球団に比べ充実しています。
しかし、すでに優勝の立役者である黒田が引退を表明していることから来期は先発に大きな穴が開くことになります。今シーズンはジョンソンと野村の二人がエース級の働きを見せましたが、黒田が引退することで先発の三人目以降が競争枠になります。先発として勝負する場合は経験を積んだ若手の先発候補である九里、福井、岡田の三人が当面のライバルとなります。
次に松田オーナーに期待されているリリーフに目を向けると絶対的守護神の中崎とジャクソン、一岡らで形成するセットアッパー陣は広島の勝ちパターンに割って入るのは非常に厳しい競争になることが予想されます。
一年目で活躍の場を手に入れるには慶大時代同様に得意としている先発として勝負することで活路を見出せそうです。
➎「未来予想図」
こんな選手になれる!
ズバリ!『澤村拓一』です。
巨人の守護神として定着している澤村ですが、ルーキーイヤーから2年は先発として実績を重ね、経験を積みました。
タイプとして150kmを越えるストレートを中心にパワーピッチングでバッターを捻じ伏せるスタイルは重なるものを感じます。
加藤投手の場合もアマ時代は先発が主でしたが、大学代表でリリーフにも適正を見せていましたのでピンチにも動じないクールなパワーピッチャーとして広島カープの連覇に貢献してくれる活躍を期待しましょう。