ロッテのドラフト1位は元都立の星!雑草 佐々木千隼は菅野に並ぶ「ミスター0」(桜美林大出:背番号17)

2016年ドラフトの目玉となった田中正義(創価大→ソフトバンク)と並び高い評価を受けていた佐々木千隼だったが1回目の1位指名で最後まで名前を呼ばれることはなかった。
しかし、2回目の1位指名で異常事態が起こる。
広島、巨人、横浜、日本ハム、ロッテの全5球団が佐々木を指名した。外れ1位の抽選は過去では3球団が最多だったことから今回の5球団は史上最多となった。抽選の結果、佐々木を射止めたのはロッテだった。
今年は1位抽選が3回だったが、史上最多の外れ1位抽選もありドラフト会議の醍醐味や難しさが凝縮されていた。
「最強外れ1位」という少し複雑な称号が佐々木には今後ついてまわるが、2016年ドラフトの主役の一人として野球ファンの記憶にその名を焼き付けたに違いない。
➊基本データ・球歴・アマ実績
ポジション:投手(右投右打/181cm 83kg)
出身校:都日野高校→桜美林大→ロッテ(ドラフト1位)
生年月日:1994.6.8
出身地:東京都
佐々木千隼は野球エリートではなかった。
幼少期は日野イースタンジュニアで野球を始め、中学は三沢軟式野球部に所属し、高校は地元の都立校の日野高校へ入学している。日野高への進学理由は日大三と好勝負をした試合を見て、刺激を受けたと明かしている。
環境として決して恵まれていないが、高校3年夏の西東京大会で一躍脚光を浴びることになる。
3回戦で名門・早稲田実を延長13回の激闘の末撃破した。立役者は佐々木自身で221球を投げて完投した。続く甲子園出場経験がある強豪・日大鶴ヶ丘高との4回戦でも完投勝利を挙げ、ベスト8まで勝ち進む活躍をみせたことから「都立の星」と呼ばれる存在となる。
しかし、大学への進学は希望していた大学のセレクションで不合格なり、本人によると「桜美林大に拾ってもらいました」。とここでも試練を味わう。
入学当時の桜美林大は首都リーグで二部。そして新興リーグのため注目度は決して高くない環境であり、プロを目指すには六大学や東都と比較すると不利になる。
それでも佐々木はいつでも与えられた環境で「そこでやるしかないので」と最善を尽くす姿勢を崩さず野球に取り組んだ。
登板機会はチームが一部に昇格した2年の春からで先発として定着する。しかし、コントロールのレベルはまだまだで1・2イニング持たずに交代することもありました。
ただ、夏にプロの巨人とのオープン戦で三振を奪い、もっと高いレベル、プロを目指すきっかけとなったのは佐々木にとって大きな転機となった。
佐々木の素質が一気に開花したのは4年春、3完封を達成し防御率0.27と圧巻の投球で一躍ドラフト候補へ駆け上がる。
迎えた7月には大学日本代表として日米大学選手権の開幕戦に先発し、7イニングを12奪三振、1失点の快投を見せてさらに評価を上げることになる。
佐々木の4年次がどれだけ飛びぬけた実績かを物語る数字がある。
1.首都リーグの記録である53イニング連続無失点
2.年間7完封
この2つの数字は今や巨人のエースに君臨する菅野智之が2011年に記録したもので、同じ成績を佐々木は達成し、プロへの道を自ら切り開いた。
➋ドラフト前の評価は?
佐々木が最も注目されたのは大学4年です。田中正義(ソフトバンク1位)が故障により戦線離脱する一方で大学代表での好投、リーグ無失点記録に並び「ミスター0」の称号を得る。
投げるたびに評価を上げ続けて「ドラフト1位指名確実」の声が聞こえてくるまでに成長し、サイドに近いスリークォーターから繰り出すストレートは最速153kmまで伸ばし、キレも一級品と評され、変化球もシンカー、スライダー、フォークと多彩でカーブも習得して緩急をつける投球術も身に付けている。
また、佐々木の成長過程には二人の元プロ野球選手が指導者として関係している。
一人目は元巨人のエースとして活躍した桑田真澄氏で大学2年まで特別コーチとして指導を受け、課題だった制球難について場面に応じた意識の持ち方や自ら手本を見せるなど実践的な内容だった。
3年になってからは元横浜で活躍した野村弘樹氏が特別コーチに就任。特に学んだのは試合での力の加減、投球フォームの体重移動、登板までの調整法などをプロでの実体験を元に伝授された。
➌ドラフト指名時の様子や声
まずは指名を受けた佐々木千隼投手です、
外れ1位の5球団競合の結果、ロッテに決まると「緊張と嬉しさがあって、凄く嬉しかったのに無表情になっちゃいました」と予想外のドラフト会議の展開を振り返るとやっと笑みを見せた。
ロッテのエース涌井について「小さいころから大好き。吸収させてもらいたい」と早くも弟子入りを志願した。
同年代の大谷(日本ハム)について「雲の上の存在だけど、早く勝負できるように頑張りたい」と今や球界のヒーローに対しては控えめなコメント。
都立初の快挙となったドラフト1位指名について「これで都立でもプロ野球選手になれることを証明できた」と非エリート、雑草魂のプライドを覗かせた。
一方で指名権を獲得したロッテや関係者は、
伊東勤監督は「大成功。来年から先発ローテーションに入って、実力を出してくれれば2桁は勝てる」と指名獲得を喜び、大きな期待を語った。
特別コーチの野村弘樹氏は「失点しても黙々と投げられるハートの強さはプロ向き。まだ球速も上がるはず。力と技術を兼ね備えた選手になって、プロの舞台で大暴れしてほしい」と愛弟子への期待とプロ入りに向けてのエールを送った。
➍プロ入り後のライバルは?
佐々木の憧れでありチームのエースに君臨する涌井、ルーキーから3年連続で実績を積み重ねた石川歩が先発の中心。残る4つのローテーション枠を佐々木は勝ち取らなければならない。
競争相手として同じ右腕では実績十分な唐川、未完の大器と呼ばれ続ける大嶺、今季急成長を見せた二木、2016年ドラフト2位で不本意な成績の雪辱に燃える関谷、去就が不明だが日本で実績十分なスタンリッジは1番のライバルになる。一方左腕では台湾出身のチェン・グァンユウ、高卒2年目の成田翔が先発候補となる。
ロッテの先発候補をこうして考えてみると佐々木にとってはチャンスは1年目から多く与えられそうです。まずは一軍キャンプ、オープン戦でしっかりとアピールができれば開幕ローテーション入りも決して夢ではありません。
➎「未来予想図」
こんな選手になれる!
ズバリ!西武の『十亀剣』のち元巨人のエース『斎藤雅樹』です。
サイドスローでストレートが150kmを越える本格派である十亀は現在のプロ野球では稀少なタイプの投手である。
投球フォームの特徴からプロ1年目はリリーフでフル回転しましたが、2年目以降は力強いストレートを武器に主に先発として先発で実績を残し、着実に西武の投手陣の中心的存在へと成長している。
佐々木が所属するロッテはリリーフ陣が安定していることから先発での起用が予想されます。
サイドスローの先発で思い出されるのは元巨人のエース斎藤雅樹氏。
通算180勝、MVP1回、2年連続20勝、沢村賞3回など他にも多くの投手タイトルを総ナメにし、野球殿堂入りも果たした「ミスター完投」。
佐々木の大学ラストイヤーの獅子奮迅の活躍を見ると、斎藤氏が躍動した姿に重ねてしまいます。これから始まるプロの世界で偉大過ぎるサイドスローにどこまで近づくことができるのか?
元都立の星から球界の星へ、雑草魂を胸に佐々木千隼の新たな挑戦が始まる。