楽天ドラフト1位は4年連続甲子園の星!藤平尚真は名門高エースの系譜を継ぐ逸材(横浜高出:背番号19)

2016年ドラフトの一つのキーワードとなった「高校BIG4」。
その面々は寺島成輝(履正社→ヤクルト1位)、今井達也(作新学園→西武1位)、高橋昂也(花咲徳栄→広島2位)、残る1人がウェーバー順で誰よりも早い全体の3番目に楽天から指名を受けたのが藤平尚真(横浜高)だった。
高い注目を浴びた最初で最後の全国舞台となった3年夏の甲子園。結果は3回戦敗退だが、名門高校の看板を背負い投げる背番号1のマウンドでの姿はやはり逸材と言われた。
高いポテンシャルを発揮できなかった高校時代だったが、楽天ゴールデンイーグルスからの単独1位指名によって世代トップクラスの存在であることを証明した。
➊基本データ・球歴・アマ実績
ポジション:投手(右投右打/185cm 83kg)
球歴:横浜高校→楽天(ドラフト1位)
生年月日:1998.9.21
出身地:千葉県
小学生の頃から地元ではちょっと有名な野球少年だった。幼少の頃は野球熱心な祖父から野球を教わり、小学6年には千葉ロッテマリーンズジュニアに入団。
千葉市シニアでは中学3年夏に日本選手権ベスト8まで進み、新潟シニアとの対戦では10者連続三振を記録して圧巻の投球を披露した。
高校入学前から最大の武器はバックスピンの聞いたストレートだった。小学6年で120km、中学3年秋には139kmを計測するまで急成長した。結果、U-15代表にも選出されて世代を代表する投手として名を轟かせた。
余談とはなるが藤平の身体能力を物語るエピソードとして、中学3年のときには陸上選手として走り高跳びで全日本中学陸上競技選手権大会(全中)2位、そしてジュニアオリンピックでは優勝してしまったのだ。
また、足も速く50m走=6秒0、100m走=11秒79、1500m走=4分42秒と中学時代は野球と陸上の二刀流として溢れる才能を発揮していた。
名門横浜高校で1年秋からエースを務めたが甲子園には縁がなかった。迎えた高校最後となる3年夏、決勝で慶應義塾高を破り初の甲子園出場を果たす。
初めての甲子園出場をかけた大一番に藤平は先発し、アベレージで140km中盤のストレート、タテ・ヨコのスライダー、解禁したフォークを操り6回まで2安打無失点の好投を見せて先発・エースとしてゲームを支配し、チームを勝利に導いた。
優勝後には涙をこぼし「ここまで苦しいことばかりだったので、本当に嬉しい。自然に涙が出てきました」と喜びよりも安堵したようなコメントを残したことに藤平の高校時代の苦難が滲み出ていた。
1年生から名門校のエースの看板を背負い、甲子園に届かなかったことへの責任を一人で負ってきた少年に野球の神様はやっと微笑んだ。
念願の甲子園初戦は東北の雄 東北高校だったが、藤平は初回から5者連続の三振を含む13奪三振、1失点と派手な全国デビューを飾った。内容も左打者が6人並ぶ打線に対して、得意のストレート・スライダーを中心に内角を厳しく突く素晴らしいものだった。
続く相手は普段から親交もある寺島成輝(ヤクルト1位)率いる履正社、先発ではなく救援でマウンドに上がるが初球のストレートを狙われ、タイムリー二塁打を浴びる。その後は急な登板にもかかわらず2安打に封じたが、チームは敗退し藤平の最初で最後の甲子園は幕を閉じた。
試合後の藤平には涙はなく、先発して打ち込まれた石川をなぐさめ、「泣きたい気持ちも悔しい気持ちも強い。でも、チームメイトが泣いていて、自分は横浜高校のエースとしてみんなを励ます立場にあると思うので」と気丈に振る舞い、やりきった表情を浮かべていた。
高校最後の大会となったU-18アジア選手権では投打で活躍し、2大会ぶりの優勝に貢献。中学時代からの世代トップクラスである実力を高校でも示した。
➋ドラフト前の評価は?
高校2年夏には148km、そして秋には大台である150kmに到達したストレートが最大の武器であり、評価が高かった。多くの選手をプロへ送り出し、藤平を2年夏まで指導した渡辺元智総監督は「素材は涌井(ロッテ)以上」と現役でエースとして活躍する教え子を引き合いに出し、太鼓判を押している。
3年夏に出場した甲子園の開催前は寺島成輝、高橋昂也の3人で「BIG3」として大きな注目を集めた。スカウトからの多くの評価はラフト1位を示すAランクがほとんどで、高校生ではあるがそれほど時間がかからずに一軍で先発できるという見方だった。
体格についてもマウンドでのシルエットの美しさや、バランスの良さを挙げる声も多く正に「ピッチャーになるために生まれた男」と言って良いのではないだろうか。
指名を考えていた球団スカウトからは先発完投型として育成を考えており、リリーフとして声が無いことが藤平のスケールの大きさ、将来性の高さを裏付けている。
➌ドラフト指名時の様子や声
まずは指名時の藤平の様子や声、
全体の3番目に呼ばれ「1位でくるか少し不安だったけど、1位で指名されて嬉しい」とまだあどけなさが残る口調で喜びを語った。
楽天の本拠地仙台について「あまり分からない。寒いなと思います」と話すにとどめた。
チームメイトについては「同じ神奈川の先輩である松井裕樹さんがいる。近くで勉強させてもらって成長したい。1学年上のオコエさんにもいろいろ教わりたい」と同世代の先輩を手本にしたい考えを明かした。
プロ1年目の目標として「新人王にこだわって、タイトルを取りたいと思います」と頼もしい新人王宣言も飛び出した。
さらに憧れの選手は「日本ハム 大谷選手」と即答した。理由は「高校時代からの憧れで、野球も私生活も一流だと感じるので」と今やリアル二刀流で日本プロ野球のヒーローとなった男を目標に掲げた。
一方で指名した楽天からは、
星野副球団会長は「今日決めた。バネが良くて3年でエースになれるよ。4年後には田中正義(ソフトバンク1位)、佐々木千隼(ロッテ1位)にも負けないピッチャーになっている」と高い評価と期待の言葉を掛けた。
立花球団社長は「誰が一番かという議論の中で、星野副会長を中心にスカウト陣の票も入れて決めました。今後が楽しみです」と今年のドラフトでは一番の評価であることを改めて語った。
梨田監督は「高校生とは思えないほど体がしっかりして、即戦力という評価です。同じ横浜高校の松坂、涌井よりも上ではないかと感じている。故障がなければ1年目から5勝はいけるのではないでしょうか。開幕ローテに入って欲しい」と即戦力としての期待を明らかにした。
➍プロ入り後のライバルは?
楽天の先発陣はエース則本、FAで加入する岸が中心となるが残る先発枠は4つもある。
梨田監督言うように1年目から先発ローテーション入りも決して夢ではなく、競争相手を考えてみると同じ右腕では今年成長を見せた安樂、故障からの復帰を目指す釜田、安定感が増した美馬、そして同じルーキーの池田隆英(創価大→楽天2位)となる。続いて左腕で考えると、着実に実績を残してきた塩見と辛島、飛躍が期待される森となる。
メンバーを改めて見てみると、二十代が多くフレッシュな競争はキャンプやオープン戦の結果が中心となることが予想され、藤平として最初の目標は一軍キャンプ入りを果たし、オープン戦で登板するチャンスを手に入れることになる。
➎「未来予想図」
こんな選手になれる!
ズバリ!『涌井秀章』投手です。
意外性は必要ない。同じ名門横浜高校からプロの世界へドラフト1位で飛び込み、西武とFAで移籍したロッテでもエースとしての結果を残し、存在感を発揮する先輩である。
西武時代も高卒でありながら早くから一軍に昇格し、瞬く間にエースの座に上り詰めた姿や軌跡は藤平のこれからのプロでの活躍をイメージするうえでこれ以上ない手本となる。
遡れば、「平成の怪物」と称された松坂から涌井と紡がれた横浜高校エースの系譜を継ぐ藤平はどれほどの投手になれるのか?
楽天ファンはもちろん、多くの野球ファンは高校では開花しなかった大きなスケールと物語りを受け継ぐ若き右腕のこれから始まる新たな挑戦を楽しみにしている。